第4回「ミャンマーの政情」

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ミャンマーに来て1ヶ月半が経ちました。こちらの生活にも慣れてきたころで、現地の社員さんとも冗談を言い合いながら楽しく過ごしている毎日です。ヤンゴンの生活は渡航前に聞いていたとおり基本的には平和なもので、安全意識がつい薄らいでしまいそうになります。しかしながら、海外駐在員向けに注意喚起を呼びかけるメールが大使館などから連日届いており、とくに国境付近では武装集団が軍を襲撃するなど政治的に不安定な素地がまだまだ残っています。

このような政情に関する情報は、外務省の海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/)から収集することができますので、ぜひ活用してみてください。地域ごとの危険情報が色分けして区別されているので眺めているだけでも面白いですし、危険地域で何が起きているのかを考えてみるとその国の実態と世界の情勢が見えてきます。たとえばミャンマーの場合は、外務省の定めるレベル3(渡航中止勧告)とレベル2(不要不急の渡航中止)の地域がいくつかあります。これらの地域では一体何が起こっているのでしょうか。

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ミャンマーでレベル3(渡航中止勧告)が発令されている地区は、2016年10月現在、ミャンマー北部にあるシャン州コーカン自治区とカチン州ライザーと呼ばれる地域です。中国との国境沿いにあるこれらの地域では、少数民族武装組織がミャンマー政府からの停戦合意に応じず、政府軍との内戦が続いています。先月、アウンサンスーチー国家顧問が米国訪問し、経済制裁の解除を取り付けたことが話題となりましたが、実は米国訪問よりも中国の訪問を優先させています。国境付近の安全保障に影響力のある中国の協力を得、ミャンマー政府が少数民族との和平を最重要視していることが伺えます

また、ここ数日ミャンマーで話題になっているのはレベル2(不要不急の渡航中止)のミャンマー西部ラカイン州です。バングラデシュと国境を接するラカイン州の町マウンドーでは警察署が武装グループに襲撃され、20名以上の犠牲が出ています。ラカイン州では2012年から多数派の仏教徒と、少数派のイスラム教徒ロヒンギャの人たちの衝突が発生しており、今回の事件はミャンマーから不法移民として扱われているロヒンギャが実行犯とみられています。また、ロヒンギャの数は13~14万人ともされており、国外流出・難民化し続けています。

 

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一般的にはミャンマーは「仏教国で心優しい国」と言われることの多い国ですが、他宗教・他民族ならではの問題も孕んでいることに目を背けてはいけません。日本人にとってもこれらの諸問題が無縁であるというのは間違いで、たとえば紛争地で難民化した人たちが大量に日本に押し寄せてくるというのは現実としてあり得ることです。実際に、昨年度はミャンマーからの難民申請は808件ありました(在留資格が認められたのはたった12名です)。日本にいたとき、私にとって紛争や難民、貧困といった問題はどこか遠い国の問題としてとらえていました。そうではなく、これらは私たちにも影響を及ぼしかねない差し迫った問題なのです。日本人の役割として私たちは何ができるでしょうか。