日本の介護を
世界のスタンダードに
INTRO
DUCTION
インターネットや交通網の発達により、押し寄せるグローバル化の波。
その流れは介護業界にも確実に迫っています。
国際社会の時代において、ますます求められるものがコミュニケーション能力や人材教育。
これからの社会を生き抜くためには会社だけでなく、
個人の意識変革も必要な時代になりつつあります。
そこで今回は、人材育成やコミュニケーションのスペシャリストである
コミュニケーションエナジー株式会社社長の湯ノ口弘二氏をお迎えして対談いたしました。
介護を通して、
日本の日常生活を豊かに。
中元
まずは本日のセミナーありがとうございました。
そして、今回の対談にもご参加していただき、ありがとうございます。(この日は湯ノ口先生に第6回目のファシリテーター研修で来札していただいておりました)
湯ノ口氏
こちらこそ、ありがとうございます。
さくらコミュニティさんの研修では感動が多く、毎回来るのを楽しみにしています。
中元
湯ノ口先生がこの研修に関わっていただいてからメンバーたちに劇的な変化や成長が見られてこちらとしても、毎回楽しみにしております。もともと介護に携わるメンバーたちは、熱い思いを持っている人が多いんです。その情熱をうまく引き出して、日本の介護の質を高めて誇りを持って仕事をしていただきたいと思っています。
私は今回のテーマでもある「日本の介護を世界のスタンダードにする」ということを目標に掲げています。そのためには、まずその根幹である「日本の介護」をブラッシュアップしていかなければならないと思っています。
湯ノ口先生も「教育を通じた世界平和」に力を入れていらっしゃいます。「世界」という部分で共通の思いがある中で、介護業界は今後どう進めば良い方向に導くことができると思いますか?
湯ノ口氏
まずはじめに言いたいこととして、介護を通して日本の日常生活が豊かになればと願っています。僕は日々の生活が豊かになることが真の幸せなのではないかと考えているんです。現在、人材開発やマネージメントサポート、コンサルティングなど企業向けの教育事業を行っていますが、企業の最終目標として「社会を良くする」ということなんです。ということは、企業もそこで働く人々も良くなければならない。
働くことの基盤は、やはり日常生活なんです。それが平和で安定的な暮らしが送られる場であれば、自ずと質の良いサービスや商品が生まれるのでは、ということが私の考えです。
現在私たちの社会はこれまで経験したことのない高齢社会を迎えています。団塊世代と言われる方たちが、介護を必要とする時代なんです。これを下支えする子供たちは40~50代。会社でいえば重要なポストを占めるような世代の方たちになるんです。この方たちが親の介護のために仕事を辞めなければならない。
そうなれば、日本の経済が揺るぎかねない。そこで必要なのがやはり介護業界の力なんです。介護は本当の意味での日本や社会を支える力になっていくんじゃないでしょうか。
中元
なるほど。それが、介護を通して日常生活が豊かになっていくということなんですね。そしてそこに携わる介護のメンバーが成長していくことによって、より良い社会を作り上げていくことにつながっていくわけですね。
平成12年から介護保険法が施行されました。それから十数年が経ち、先ほどお話にもありましたが日本はどの国よりも早いスピードで高齢化が進みました。その間、国や行政は様々な施作や教育を打ち出しましたが、介護に直接携わるスタッフが報われたりモチベーションが上がったのかと言われればそこには疑問が残ります。
なぜそうなるかというと、そこにはやはり社会の構造的問題が立ちはだかっているということなんです。そこを改善していくためには、国や行政ではなく現場レベルでの教育が必要なのではと思っているんですが、先生はどう考えていますか?
湯ノ口氏
いくつか切り口はあると思いますが、まずは枠組みにとらわれないイノベーションが必要なんだと思います。既成概念がある環境の中では、構造変革をすることはなかなか難しいです。本当の意味での改革や改善を進めるためには、今の環境を壊してでも進むんだという強い意志とリスクを恐れない勇気が大切です。ただリスクがあると人は着いてきません。そのためには、未来のあるべき姿やビジョンの提示が必要です。
例えば、テクノロジーの有効活用。人工知能やスーパーコンピューター、スマートシティを念頭に置いた介護のあり方、それらを業界に取り入れた抜本的な構造改革が迫られているのではないかなと思っています。こういった時代に向けての問題の洗い出しが今やるべきことなのではないでしょうか。
人間が手厚くやらなければならないこと、人工知能やコンピューターがカバーしてくれるところ、そう言った情報の整理を介護業界全体で向き合って議論、実践していくことが人材育成という観点からも重要なのではと感じています。
中元
イノベーションという話がありました。私の経験から言うと介護業界は非常に保守的でどちらかというと制度の中で物事を進めていく要素が強い。そしてなかなかリスクを取りたがらない業界と感じているんですが、それについてはどうでしょう?
湯ノ口氏
そう言った面に関しては他の国々に目を向けるべきだと思います。ヨーロッパ、特に北欧は見習う点がたくさんあります。
発展はモノやお金だけではなく、家族の幸せや子供の成長に価値を見出し取り組んでいる国が多くあり、教育や福祉、家族コミュニケーションの創造に力を入れています。世界の前例を参考にしながらであれば、改革の余地は残されているんではないでしょうか。今の日本社会は物質的に豊かな時代になっているのかもしれない。しかし、心の豊かさはどうか。
ご近所付き合いが減り、地域コミュニティのつながりが希薄になっているように思えます。そう言った時代だからこそ介護を通して助け合いの素晴らしさを教え、協力して生きて行く人間関係の再構築が求められているんだと思います。
仕事に対しての
付加価値を見出す。
中元
世界の実例に触れながら、家族や地域で支えあっていく仕組みを作り、次の時代に向けたイノベーションの準備が必要というわけですね。少し話は変わりますが、日本の生産労働性がOECD諸国の中で23位、しかしGDPは世界3位でおもてなしやサービスにおいては世界でも有数と言われています。そんな偏った状況の中で、これからの介護はどうあるべきと思われますか?
湯ノ口氏
数字だけで全てを判断するのは一概に良いとは思いませんが、1つ言えるのは日本人は「目的を持って働く」ことに弱いのかなと感じています。
勤勉で技術力はありますが、それだけで終わってしまう場合がほとんど。仕事に対しての付加価値を見出せているのかということがあります。
中元
一生懸命介護の仕事はやっているけれど、ただお年寄りの世話をやっているだけでは付加価値にはつながらないですし、目的を持って働くという意味で考えても高齢者がその方らしい終末を迎えさせてあげたり、人の大切さ、支え合う大切さを学ぶ仕事であることを認識しながら日々向き合うことが重要ですね。
介護業界が束となって
様々なことに挑戦を。
湯ノ口氏
その通りですね。なんのために仕事をしているのかの「Being」と、それをどのようにカタチに現していくのかの「Doing」が大事。未来を作るのには誰も答えを持っていません。そのためには理念やビジョン、使命、志しを持って働かなければなりません。介護サービスにおいては、仕事に一手間加えたからといってお金にはならないかもしれない。でもなぜそれをするかといえば、それが自分たちの志しだからなんです。仕事に対しての前向きな姿勢やこだわり。付加価値はそういったことの積み重ねなんではないでしょうか。それが「圧倒的な当たり前」となって他者が真似できないサービスにつながっていくんだと思います。これが中元社長が掲げている「日本の介護が世界のスタンダードに」という大いなる目標にもなっていくんだと思いますね。
中元
日本人の生きる姿勢や心の豊かさが、世界のスタンダードになる得るということなんですね。先生とは普段から雑談や飲み会の席で色々な話をしてきましたが、今回のお話も目から鱗の話ばかり。すべての話を本にまとめておきたいくらいです(笑)
湯ノ口氏
そう言っていただけると、嬉しくなります(笑)。30年近く多くの経営者と接してきましたけれど、今感じているのは「もう大企業の時代ではない」ということ。もちろん大企業にはそれなりの良さや社会責任を果たしていく使命もありますが、この時代に必要なのはコミュニケーションの質と量。中小企業にはそれができるんです。
それも圧倒的なスピード感を持って。リスクを恐れない勇気さえあれば、様々な構造変革を起こすことも可能なんです。介護業界の多くは中小企業です。
業界全体が束となって、様々なことに挑戦していくことがより良い未来の架け橋になっていくものだと信じております。
中元
日本人として日本の企業人として生きるあり方が問われている気がしますね。そう言った意味で、介護は人間の生死を見つめさせていただける尊い仕事。日本人の本質に触れ合えているのかなとも思います。
湯ノ口氏
中元社長の会社名は日本を象徴する「さくら」、地域の「コミュニティ」そして「サービス」とつながっています。
さくらは一本の幹で美しい花々を支えています。これが「和を以て貴しとなす」ということなんです。もともと日本は島国で災害も多く助け合って生きなければ暮らすことのできない国だったんです。そこに助け合いのコミュニティができ、質の良いサービスが生まれる。まさに今この精神が世界にとって必要なのではないかと感じているところです。
日本人初のF1レーサー中嶋悟氏よりレーシング技術を学ぶ。
レーサーの能力開発のためのコーチング指導のなかで自己変革を体験し、人財育成に強い関心を持つ。最先端の心理学や脳科学を取り入れ、活気ある職場づくりの支援に取り組む。25年以上の人財開発活動を通して育成してきたビジネスパーソンは、のべ3万人以上。
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