人のために尽くすこと。
そうすればうまくいくんだよ。
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INTRO
DUCTION
人に良くしておくと、何十倍にもなって返ってくる。
でも、返ってくると思ってやるわけではないよ。
だから、これまでずっと、いい人に恵まれてきた。
お嫁さん、お婿さん、姑、仲間たち、そして今はここの人たち。
若いとき
若いときは美容部員。いわゆるマネキンさんね。
その頃だと、大卒の初任給より給料が高かったの。
試験があってね。周りはみんな芸能人みたいにきれいな人たちだった。
わたしは上砂川の山から出てきた山猿だったから、来なきゃよかったと後悔したね。
でも、うちに帰ったら受かったという電報が入っていたの。
確か、98人中9人が残った。その同期は以来60年間ずっと連絡をとっている。
今度の日曜日には旭川からそのうちの一人が遊びに来ることになってるんだ。
それからは地元で昼は営業、夜は飲み屋さんをやって、ずっと働いてきた。
奥さんが着物や服を買ってくれて、だんなさんは夜飲みに来てくれる。
そんなふうに夫婦で贔屓にしてくれるお客さんもいたね。
周りの人たちに恵まれていたなと思う。
今日は撮影するって聞いてなかったんだけどね。
仮面でもかぶればよかったわ。
若いときから写真撮られるのが大嫌いなの。
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施設に入居した経緯
今年の3月に倒れちゃってね。
それで自分で救急車を呼んで、先生が言うにはもう一人では暮らせませんって。
それでここに来たの。
それまでは屋根に上がって雪下ろしもしていたんだけれど。
お父さんが亡くなってから13年、一人で暮らしてたんだけどね。
友達は結婚は賭けだって言うんだよ。わたしもそう思う。
わたしは賭けに成功したと思っているよ。
裕次郎の3倍かっこよかった。顔も姿もすごい好きで。
とても大事にしてもらえた。
ここに入れるのも、お父さんのおかげだと思ってる。
こんな形で札幌に住むことになるなんて思ってなかったね。
札幌に住むのは夢だったんだよ。
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コレクション
美しいものが大好きでね。
いろんなコレクションが家にあるんだよ。
もう少しでここにも到着する予定なんだけどね。
コーヒーカップとか、切子のグラスとか、服もバッグも、
ここでは、食器とかは使わなくてもいいんだけれど、
でも、ただ飾って眺めるだけで気分がいいよね。
季節に合わせて入れ替えもしなきゃいけないしね。
だってそうでしょう。春夏秋冬、それぞれに合ったものがあるから。
5月にしか持たないバッグ、7月にしか着ない服、
夏は夏らしい財布。例えば、真っ白い蛇のとか。冬は冬らしく。
息子と娘には、人に借りている家にそんな物飾っても意味ないって言われるの。
でもね、ここの人たちは「自分の城なんだから、好きなものを入れて好きなものを飾っていいんだよ」って言ってくれたの。もし、これは駄目ですとかあれは駄目ですっていわれたら、生きている甲斐がなかったと思うんだ。
ぜひ片付いたら見に来てください。
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心がけてきたこと
親は樺太から引き上げるとき、私たち子ども4人を連れて、それだけでも大変なのに、さらに傷痍軍人さんを助けて来るような人だった。
自分の子供を置いてでも、人を助けようとする、そういう人たちだった。
だからいま自分が助けられることがあると、親がよく人のために助けてきたからなのだろうか、と考えたりもするよね。
人のために尽くすこと。これが全て。
人のためにと言うまで行かなくても、人に喜んでもらえると思うことは、よくやること。
実の親子でも合わないことがあるんだから、人と合わないことはもちろんある。
でも、なんとかいいところを探して、いいところを見るようにする。仲良くする。
ぜったいに、意地悪したりじめたりしない。
もちろん、人のいいところだけ見るというのは難しいこと。
その時の感情で、昨日腹たたないことが今日腹立つこともある。
でも、それを我慢することが大事。
だって、悪いところばっかり見てたら自分も嫌じゃない?
あの人こんなやな所あるけど、こんないい所あるもんなぁと思ってあげるわけ。
仕方ないなぁと思ったりとか、我慢しなきゃならないなぁと思ったりすることは、どこかで割り切って我慢する。自分さえ我慢すればここで済むと思ったら我慢できるんだからと親に教えられてきた。
自分さえよければいいと考えない。そうすればうまくいくんだぞと。
人に良くしておくと、何十倍にもなって返ってくる。返ってくると思ってやるわけではないよ。
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今の暮らし
今日は後悔している。成田さん(※ブライトネス山鼻のスタッフ)恨むよ。笑
だって、撮るって言ってなかったんだもん。
成田さんは冷静で賢い人。大好きだったけど、今日で大嫌いになった。
ここの人たちは本当にいい人たち。だから勝手に友達に宣伝してるの。
なんでこんなに良いんだろうというくらい、みんな人間が出来ている。
優しいと言うか、普通なんだろうけど。
裏表なく働いているというのが見てるととても感じが良い。
本当にいい人たちなんだって言うのは見たらわかる。
だって、朝昼晩一緒にいるんだから。
おばあちゃんおじいちゃんがいろんなことを言うんだよ。
何回言わせるんだっていうことを。
腹立つこともあると思う。だってこういう施設で暴行事件とか起きてるでしょ?
でもここの人は、何度でも優しくコミュニケーションを取るの。
それに、Aさんには優しくてBさんには冷たいということもない。本当に裏表がない。
みんなに平等に親切。
これはここの最高の宝だわ。
それでいて安い。高かったら居られない。
だから、札幌ではこんな施設は他にないと思ってる。
これまでずっと、いい人に恵まれてきた。
お嫁さん、お婿さん、姑、仲間たち、そして今はここの人たち。
なんて、覆面して話すんだったら、もっと面白い話ができたのに。
お腹がよじれるような話、いくらでもできるんだけどね。
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